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第20章 人と環境に優しいバスの時代へ(最終章)

目次

道バス協会創立70年記念式典を挙行

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「北海道のバス事業」記念誌は、道バス協会創立70年を記念して発刊されたが、道バス協会創立70年記念式典については触れることはできなかった。

平成11年6月18日、札幌プリンスホテル国際館パミールで社団法人北海道バス協会創立70年記念式典が挙行された。

この日は、北海道運輸局長、北海道知事、北海道警察本部長の感謝状が授与され、厳かな中で晴れがましい式典が進行した。引き続き、特別功労者として加藤信吉(第6代道バス協会長)、高野博(元道バス協会副会長)、中木平三郎(元道バス協会副会長)、近藤初一(元道バス協会理事)の4氏に特別功労感謝状が道川忠会長から渡された。

記念式典の会長挨拶の後に、中田洋北海道運輸局長、堀達也北海道知事(石子彭培公営企業管理者)、北海道警察本部長(掛江浩一郎交通部長)、櫻井勇日本バス協会理事長の祝辞があり、このあと加藤幸嗣記念誌編纂委員長の編纂報告があって閉会し和やかな祝賀会が開催された。

ひとくちに70年と言うが、その歴史には重みがある。道川忠北海道バス協会長の式典挨拶(抄)を掲載しておこう。 「北海道バス協会の歴史は、星雲時代ともいえる大正末期までの創生期を経て、昭和5年1月小規模事業者を糾合した団体活動の必要性の機運が高まり、中央の動きに呼応した現在の社団法人北海道バス協会の前身「北海道バス懇話会」が設立されてから70年の歳月が流れようとしております。 日本のバス事業の始まりは、明治6年1月でありますが、北海道ではこれに遅れること11年後の大正3年5月根室~厚岸間にフオード社製8人乗りの自動車が運行したのが最初であると記録されております。

バス事業がはじめて自動車運輸業として規定されたのが昭和8年のことであります。北海道におけるバス事業は、昭和初期の混乱、統合時代、戦乱による統制、大統合、そして戦後の再建復興時代を経て高度成長期における過疎・過密の時代、バブル崩壊後の大転換を経験してきました。

この間、私達の先覚者は戦前・戦中における燃料消費規制、観光バスの運行停止、資材の割当配給、言語に絶する自主除雪による通年のバス路線確保など数々の苦難を乗り越え、そして戦後二度に亘るオイルショックによる燃料不足、全国一の負担を強いられた旧国鉄の特定地方交通線廃止に伴うバス転換、バブル崩壊に伴う経営難等々、筆舌に尽くしがたい幾多の困難な試練に遭遇しながら、今日のバス業界の基盤を確立してきたのであります。

バス業界が今日あるのはまさに私達の先覚者、先輩諸氏の並々ならぬご努力の賜物であります。

しかし、今日のバス業界を取り巻く環境は、モータリゼーションの進展と過疎化の進行に伴い近年とみに悪化しており、乗合バスは昭和44年をピークに輸送人員は激減の一途を辿り、事業経営は一段と厳しさを増しております。

加えて、規制緩和に伴い貸切バスについても平成12年2月1日免許制から許可制に移行し、乗合バスについても平成13年度末までに需給調整規制が廃止されるなど、大改革の時代を迎えようとしております。(中略)

今後においても公共輸送機関として輸送の安全確保をはじめとする重要な社会的使命を達成し、地域社会及び観光振興の発展に寄与してまいりたいと存じます。また、地域住民に密着した利便性の高い公共交通として、地球環境と人にやさしいバス交通のあり方について理解と協力を深めるために、今年から協会の重点推進項目としてバス復権運動を展開していくこととしており、来るべき21世紀に向けて新たな飛躍の第一歩を踏み出すことといたしました。」(後略)

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バス復権運動を推進

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バス復権運動は、バス事業推進の根底に流れる思想であって、これまでも時折々に実行されていた。だが、バス復権運動を明確な旗印として息の長い継続的な全国的運動へと提唱したのは、平成11年の道バス協会新年社長会であった。

6月23日、道バス協会はバス復権運動の推進に関する要望書を北海道運輸局長と北海道知事に対し提出するとともに、日本バス協会長へ全国的なバス復権運動の展開と推進方策の樹立を求める要望書を提出している。

このように地方バス協会から全国運動の展開を要請することは異例のことでもあったが、地域住民に密着した公共輸送機関としての位置付けが未だ低い現状に思いを馳せて全国展開を呼びかけたことは、また当然の成り行きであったのかも知れない。

平成11年8月、道バス協会は乗合バスの全車両にバス復権運動ポスターを車内吊りし、また、ターミナル・待合所・営業所等に大型ポスターを掲出し全道一斉にバス復権運動を展開した。これは北海道運輸局、北海道、北海道市長会、北海道町村会の後援を得て、官民一体のスタートになった。以後、このバス復権運動ポスターは毎年継続されている。

この運動に呼応する形で「バス復権と活性化を考える講演会」も開催された。

平成11年11月24日の講演会は、乗合バス事業の規制緩和を迎えるにあたって、全道的にまだ市町村などで理解が進んでいない現状に対する先行的な試みとしても意味深いものであった。バス交通のあるべき方向性の示唆を得るため、前述の関係機関の後援を得て開催されたが、基調講演は「北海道のバス交通とまちづくり」で北海学園大学の五十嵐日出男教授が講演し、穂別町の「ふれあいバス」で森田助役が事例発表を行い、260人の参加者の関心を集めた。

平成13年2月19日のバス復権と活性化を考える講演会は、更に盛大であった。講演1は、弘前大学の田中重好教授が鰺ヶ沢の住民参加による生活交通確保の実例を交え「規制緩和・地方分権化のなかで地域交通をどう守るかー地域公共交通の創造に向けてー」で関心を集め、講演2は北海道総合企画部の市岡卓企画課長が「バス復権と新しい補助制度について」の現状説明が行われた。この講演会の参加者309名は、地方公共団体による主体的な生活交通の確保という時代の流れが、いよいよ間近に迫ってきたことを実感した。

平成14年2月22日のバス復権と活性化を考える講演会は、バス事業者の実践的な自己啓発を目的として開催された。「規制緩和後のバス事業各社の経営戦略の方向について考えるー規制緩和時代に生き残る経営体質づくりに向けてー」と題して、コンサルタント会社(株)産業社会研究センターの中村章社長が講演した。

一方、全道の各地区バス協会では、多年にわたり「バスの日」の記念行事などを通して、実質的なバス復権運動を活発に展開していた。

児童を対象としたミステリーバスや写生会と合わせた自然体験バス、高齢者を対象としたパークゴルフと温泉入浴バスなど、各地域の人々とのふれあいをキーワードに多彩な行事が催されていた。

このようにバス復権運動は、バス事業関係者等の自己改革をも実践しながら、じっくりと地域社会に浸透させていくことが最も重要なことであり、道バス協会のこうした試みはいずれ社会的なコンセンサスを得ることになろう。

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北海道のバス・マスコット誕生

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バス復権運動の展開は、ユニークな産物を生み出した。平成14年2月22日、北海道のバス・マスコットキャラクター「きょろたん」が誕生した。

これは、道バス協会に設置したバス活性化・近代化ワーキング委員会(富永基委員長:㈱じょうてつ社長)で検討されたもので、北海道バス協会の会員之証にあるマスコットを北海道のバス・マスコットとして愛称名を全国公募した結果、「きょろたん」と決定した。愛称選考委員会(富永基委員長)で厳選したが、最優秀入選作品「きょろたん」は岐阜県岐南町の栗本禮華さんが応募したもので、全国からの応募8,758通(道内応募4,194通、道外応募4,564通)の中から選定された。「きょろたん」の愛称は、「注意深くキョロキョロと安全を確認しながら走り回り、お客様に安心をしていただくバス。キョロキョロしたくなるような魅力あふれる北海道の観光地を走り回るバス。」をイメージして名付けられた。

道バス協会は、「きょろたん」の愛称を特許庁に申請し商標登録を行った。

また、図柄は著作権を有する(株)須田製版が商標登録を行い、道バス協会の専用実施権設定契約により一体的使用を担保した。

マスコットキャラクターをもつバス協会は全国的にも初めてで注目を集めた。

また、バス活性化・近代化ワーキング委員会は、このキャラクター誕生とあわせ、北海道バス協会のホームページの開設を検討した。

観光北海道を全国に発信することも大切であるとして、道内の主要観光地51箇所の観光写真も網羅したものにつくりあげ、また、バスの歴史としてこの「北海道のバス事業」も毎月連載で紹介するボリュームにあふれたホームページとなった。2月22日、道バス協会は全国に向け一斉に発信した。

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DPI世界会議札幌大会の開催

平成14年10月15日、日本で初めての開催となる「第6回DPI世界会議札幌大会」は、世界中の障害当事者および関係者が国内外110の国と地域から 3,000名以上が集い開催された。DPIとは「障害者インターナショナル」のことで、すべての人々が等しく価値ある存在であり、すべての人々が尊重される社会であるために、世界の障害者の「完全参加と平等」の実現をめざしている。

この大会運営に必要な大会移動用車両は、札幌組織委員会から福祉施設・移動サービス団体に対し呼びかけたほか、社会福祉協議会のリフト付ワゴン車の借用、札幌ハイヤー協会・北海道バス協会等へ協力を求めた。

ノンステップバス等の車両は、まだ道内では少ない現状にあったが、札幌大会組織委員会が直接各社に依頼したバスは、ノンステップバス9台(札幌市交通局)、ワンステップスロープ付バス28台(ジェイ・アール北海道バス)、ワンステップバス15台(北海道中央バス)であった。

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人と環境に優しいバスへの動き

国土交通省は、高齢化社会の到来などに対応し、高齢者、身体障害者が全体として公共交通機関を利用できるようにするため、ノンステップバスの導入等公共交通移動円滑化事業の推進に積極的に対応しようとしていた。

また、都市部への流入車対策や国立公園など観光地における環境保全の観点から、低公害車普及促進事業に取り組み、自動車NOx・PM法による規制対象地域(三大都市圏)の外にも補助対象地域を拡大しようとしていた。

国土交通省の平成15年度バス関係予算は、大きく様変わりをした。

バス・トラックをターゲットにしたCNG自動車等の短期集中的な導入及びDPFなどの装着を目指した低公害車普及促進対策事業は、平成14年度の予算枠は1,201百万円であったが、平成15年度の予算枠では5,222百万円と4.3倍の伸率となっていた。

人と環境に優しいバスへの動きは、大きな流れとなりつつあるが、現実は厳しいものがあった。バス事業の経営環境と体力は衰えを見せながら、求められる現実への対応はジレンマに苛まれた。地方自治体の財政逼迫は、国との協調補助に連動できないところも多く、ましてや地方自治体の単独補助の増加は望むべくもなかった。

北海道における「低公害バス」と「人にやさしいバス」の導入状況は、アイドリングストップ装置付バス98台、ハイブリッドバス6台、CNGバス7台、 DPF装置付1台、酸化触媒装置装着バス11台、リフト付バス11台、ワンステップバス266台、ノンステップバス92台、CNGノンステップバス4台となっている。

知床国立公園へ乗り入れる斜里バス(株)は、地球環境に優しいバスとしてハイブリッドバス4台を導入したことは、特筆すべきことであろう。

高齢化社会の到来は目前に迫っている。京都議定書にもとづく二酸化炭素の削減など地球温暖化防止に向けた環境問題も差し迫った日本の課題である。

人と環境に優しいバスをめざし、新しい挑戦をすることによって、バスへの理解と信頼が得られ、バス復権に繋がる近道となるのかも知れない。   (完)

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